奥山陽一のコラム

2010/04/24

幸せそうな笑顔とネグラな顔

 

昨日5月2日に結婚式を挙げるJC時代の後輩のK君がひょっこり顔を出してくれた。

当然当日の打ち合わせだろうと思ってはいたが、本人が本題に入らず何故か難しい話に・・・



 

難しい話と言っても、JCメンバーにとっては普通の話なのだけど、選挙の話や街の話で盛り上がった。

このK君、初めて会った頃は血の気の無いロボットのような男で、君、君、何を根拠にそんなに自信を持ってるんだい?その自信はどこからくるんだい? そんな感じの男だった。

 

ある時は理事長が決まらず、ダラダラやっている時にメンバーから相談を受け、卒業しているにも関わらず私のごり押しの中、理事長の御輿に担ぎ上げたこともあった。

 

私も一応これでも理事長経験者。

K君も一度は理事長をやってみたいという腹ではいるのだろうから、先延ばしせずに今受けろと説得したのが懐かしい。

理事長をやれば、色んなものも見えてくるだろうし、度胸も着いてくる。

決して自分にマイナスにはならない分、自分自身のモチベーションも変わってくる。

良く変わってくれれば、少しはこいつも人間らしくなるだろう、そしていつか会社のトップに昇る時がくれば多少役にたつ事もあるだろうとK君の成長を願ったものです。

 

まあそれでも根が真面目というか面白くない男というか・・・・理事長をやってさらに真っ直ぐカチカチになった部分も無きにしも非ず・・・・

相変わらず固い奴には変わりは無いと思っていたのだけど、何故かこの頃顔付きが変わったなと思っていたら彼女が出来たとの事だった。

 

どうりでニヤケ顔になったわけだ・・・・それでも固い奴には変わりはない、固くするのは違うところだけにしとけ!と言ってやりたい。

これで肩の力を抜けばもう少し良い男になるのだけど。

 

まあそんな事をブツブツ言ってる間にあれよあれよと結婚が決まり、出会って数ヶ月のスピード婚にさすがの私も口をあんぐり状態。

周りも結構ビックリしていたのだけど、お相手の彼女とお会いして、その性格の明るさと屈託のない笑顔を見ると、K君が逃がしてなるものかと押し倒したのも解らなくもない。

これを逃せば当分風俗通いに頼るしかなかっただろう・・・・スマン言い過ぎたw

 

K君がこの頃人間らしくなりつつあるのも彼女のお陰なのだろう、幸せそうな雰囲気が顔に出ている。

まあ何はともあれ良かった良かった。

 

さてタイトルにあるネグラな顔。

幸せそうなK君の話でも無ければ、K君に押し倒された彼女の顔の話でもない。

 

残業で遅くなり、仕事をしながら幸せそうな顔のK君の話とその彼女が和寒の出身である事から和寒の冬音を思い出した。

そういえばこの頃、幸せそうな顔とは全く逆の顔をした男が居たなあと思い気にもなっていたので、

一緒に残業をしていたスタッフの海彦と急遽冬音へ・・・・

 

案の定ネグラな顔をしたM君が抜け殻のように立っていた。

同時に隣の席に昼間会ったばかりのK君が彼女と彼女の友人達が宴会をしていたのにもビックリだった。

 

ここの社長も私の良き理解者であり、理事長をさせる為にJCに引っ張りあげた男である。

三人で飲みながら、M君の話題になり、社長からちょっと話をしてやってくれないかとの事、M君を呼止め色々話を始めた。

 

「M君調子はどうよ?」

「調子ですかぁ・・・・ん~・・・・あんまり・・・・良く・・・ないんです・・・よね~・・・・」

「おまえ俺まで調子狂うじゃないか!」

 

話は端折りますが、何せ項垂れた姿勢でやる気が出ない様子のM君。

新人の頃、うちにも泊りがけで研修にきて、寝る間も惜しんで私に色々問いかけてきた事もあった。

その頃の彼の口から出る頑張ります!という言葉は本当に頑張るという感じで、やる気が伝わってきたものだった。

 

でも、今の彼はただ仕事をしているだけ、厳しく言えばただ息をしているだけにしか見えない。

 

昼間のK君じゃないが、恋をしてみろとか、好きな人に食べてもらうつもりで料理を作ってみろとか、

うちの海彦を連れて夜の街を散歩してきてみろとか色々話ながら、M君の夢や目標について聞いてみた。

 

「何時か・・・お店を・・・やり・・・・たいんです・・・」

「何時かって何時?」

「・・・・4・・・・4年後・・・・くらいに・・・・」

「4年後に何の店?」

「漠然としているんですけど・・・こういう・・・お店です・・・」

 

返答が全て自信のない小声で目を合わせ様としない。

 

「こういうってどういうのよ?本当にやるつもりならもっとシャキッと喋ろうや」

「はい、まだ漠然としていますが冬音のような料理を出す店をやりたいです」

「今何歳になった?」

「36歳です」

「じゃあ40歳の時には独立して店を始めたいんだね?」

「はい・・・」

「独立する為にどんな準備してるの?」

「え?準備?・・・・・」

「店をやりたいっていう夢や目標があるならそこに向かって走るしかないんじゃない?

あと4年だよ?たった4年だよ?当然目標に向かって走ってるんでしょ?」

「いや・・・別に・・・そこまでは・・・考えてもみません・・・でし・・・た・・・・」

 

「よし、M君が店を出せないに10万!」

「俺もMが店を出さないに10万」

社長まで賭けに乗ってきた。

 

普通ならここで、いや絶対に出します!と言ってくれるだろう・・・・・

でも彼は違っていた、やっぱり無理だよね という方向にしか進まない精神状態なのかもしれない。

 

「M君が必死にやれば開店の時のご祝儀に20万貰えるんじゃん。

よし!見返してやるぞ!!こいつらから20万奪ってやるって気にはならないの?」

 

「えぇ・・・お二人が言うなら無理かなと・・・・」

「アホか!三回くらい死んでくれ!」 

 

いかん毒舌が炸裂。 もう止まりそうも無い・・・・ 

この後も呆れさせる言葉を発するので、「お前が喧嘩売るなら買ってやる!今夜は絶対に逃がさないからとことん話ししようぜ!」と私もツッパってしまった。

 

「お前なあ、俺は思うんだけどよ・・・1+1= なんぼよ?」

「2です」

「2だよな? じゃあよ、答えが2になる数式を思いつくまま言ってみろよ」

「3-1・・・4-2・・・5-3・・・・・・・・」

「答えが2になる数式っていっぱいあるよな?」

「はい」

「じゃあ俺が今何をお前に言いたかったか解るか?」

「・・・・・・・2になる式を出せと・・・・・」

「すまん、俺が悪かった。 あのなあ、M君が店を出すというのが今の2という答えだとしたらよ、お店を出す為の手法は無数にあるって事なんだよ。」

 

「ぁあ!・・・なるほど・・・」

「解ってくれた?じゃあいっぱい道はあるんだけど、その中でM君が今勉強しなきゃいけない事を会社の中にいる店長として自分がやるべき事と照らし合わせて幾つか口に出してみてくれないか?」

「料理の勉強、売り上げを上げる、企画、従業員に仕事を教える・・・」

 

実は社長から、店長として若い従業員に仕事を振ることも出来ずに、全部自分で抱え込んでいるから余裕もなくなるし、他の事も出来なくなるから出来ない姿を見ている下の者達にも信用をなくしていくのが会社としても不味い所だと先に話を聞いていた。

 

「じゃあM君、今の4つの事に優先順位を付けてみてごらん」

「優先順位? 料理、売り上げ、企画、従業員に仕事を振る・・・」

「そうかM君は 料理が出来れば売り上げが上がる、その料理がメニューとして自分の企画書作りになっていくと言う事なんだね?自分の下にいる従業員の事はたいして考えていないってことかな?」

「え?」

「優先順位の順番はM君がやり易いとか逃げ道を作る順番って事だけで、店長として会社の事を考えていないっていうのが見えるじゃん」

「従業員をどうしたら良いか解らないんです」

「お前が芋の皮を100個剥くのに30分掛かるとしたら、突っ立っている二人の従業員に30個づつでもやらせれば自分の仕事が10分も掛からずに終わるんじゃないのか?

そうすれば、おのずと自分は次の仕事に取り掛かれるんじゃないの?

その中で何が生まれる? 時間の余裕とか心の余裕とか色々と自分に返ってくるんじゃないの?

お前、店長だろ?板場任せてもらってる事に誇りを持てよ!新人の仕事まで自分でやらなきゃいけない、店長だから何でも自分がやらなきゃいけないっていう考えは会社にはデミリッとの何物でも無いんだぞ。」

 

「どうやって振ったら良いか解らないんです・・・・」

「あちゃ~~! じゃあ明日のミーティングで俺は変わりますって宣言しろ。

会社の為、皆の為にも出来そうな仕事からドンドン振っていくので皆で頑張ろう!って口に出せ!」

 

「明日ですか?」

「バカたれ!俺なら今すぐって言いたい所を明日におまけしてやったんだぞ! お前のズルさは許さんよ! 口に出せ!宣言しろ!逃げ道は作るな! 以上!!」

 

社長がニヤニヤにながらM君にもう一度確認した。

 

「M 俺達が今日朝方までお前の為に伝えたかった事って何か解るか? 

明日からお前がどうあるべきか解ってくれたか?」

 

「はい、仕事を振るってことですね・・・」

 

ガクっ!  

 

苦笑いのまま私の方が先に冬音から逃げ去ったとさ・・・・・

 

 

 

 

 

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