奥山陽一のコラム

2009/05/15

「想像から創造へ」

 

今日は以前から依頼のあった高校の写真教室の講師として講演してきました。

お題は「想像から創造へ」 

 



何度かこのテーマで企業や団体の中でお話させて頂いてはいるが、話の組み立て方に関しては年齢や職種により聞きやすくする為に多少アレンジしながら組み立てるのだけど、同業者が相手だと専門用語等も使いやすいが、一般に向けて発信しようとすると言葉を選ぶ・・・

今回は日頃仕事でもお世話になっている学校であり、毎年授業の中で写真教室に取り組んできているので若干話しやすい環境です。

ただ残念な事に生徒数激減の為に今年度で廃校になる事が決まっておりこれが最後の講演になる。

生徒さん達にどんなメッセージを伝えよう・・・

 

教材に昨年リフォームの時に大工さんの仕事の流れを写した写真を使う事にした。

 

校長先生から紹介を受け、私の撮影風景の動画が流れた。

 

講演スタート

 

目の前のコップを手にして、生徒さん達にこれは何ですか?と尋ねてみた。

全員がコップと答える。(一人だけグラスと答えた子がいたっけ笑)

 

次に何故これがコップと呼ばれるモノなのでしょうか?と尋ねると皆戸惑いはじめた。

水を飲んだりするから? え? ん? 何でコップ??・・・

 

単純に言えば皆さんが生れた時から言葉としてコップと教わってきたからに過ぎないんです。

生れた瞬間からこれを茶碗と教えられて育った子は何のためらいもなく茶碗と呼ぶ事でしょう。

 

では、このコップと呼ばれるモノで普段と違う使い方を考えて見ましょう。

 

一人づつに聞いてみる。

 

花を生ける。 アクセサリー入れにする。 ご飯を入れて食べる。灰皿にする(おい!高校生!)

 

こんな風に其々が違う発想を口にしてくれた。

想像の世界の入り口へようこそ・・・

 

次に自分の手を色んな角度から見てもらい、手という漢字を自分の感じるままの漢字に置き換えてもらった。

 

傷。 温。 絆・・・手というテーマでも一人ひとり感じる事は違うけどここでも答えは無いし其々が正解なのです。

 

次にクイズ形式で映像を見ながら答えてもらう。

始めにトンカチの釘を打つ部分をドアップで切り抜いた画像をスクリーンに映し出す。

 

さてこれは何だと思いますか? 感じる事でも良いです。

 

鉄の塊? 冷たい感じがする。 お墓の一部? 鉄? 石? 

 

答えを映し出すと一斉に ぁああ~~~ なんだ~~~

 

次に電動工具の一部を見せると大体の生徒さんは何かの機械の一部ではないかと答えた。

でも一人だけ・・・・ どんぶりが横になった写真と答えた生徒さんがいた。

 

全員正解!

 

え?? 機械とどんぶり?? という反応。

 

良いんです!あなたにとってこれがどんぶりに見えるのならこれをどうにかしてご飯を盛ってでも

どんぶりとして使えばどんぶりなんです。

 

答えは電動ドライバーの先を切り抜いた画像ですが、これでご飯を食べる事も想像や発想の世界なんです。

きっとどんぶりと答えた彼はモノを応用して使うという事に長けていくかもしれないじゃないですか・・・

 

画像を使った話も進み、大工さんの工具を見せていく中で、最後に額に汗する大工さんの顔のアップを見せながら、私が何のテーマの撮影をしたのでしょうか?と尋ねると全員が大工の仕事という事をテーマにしたということに気付いたようです。

 

大工さんの仕事している姿そのものを写しても良いのですが、写す側がもっともっと入り込んで目線を変えたり視野を広げることで一つのテーマに対して人より魅力のある作品を作り上げたり、其々の個性やオリジナリティーのある作品に仕上がっていくのではないでしょうか・・・

 

こんな感じで前半を終了し、後半は実践形式で生徒さん其々に学校というテーマで自分が入学してから今日までの中で感じる学校というものを撮影するように指示をした。

 

撮影を終え、一人ひとりに自分が写した一枚をスクリーンに映し出して自分が感じた事を発表させた。

 

ボロボロの上靴を写した生徒さんが 自分の靴を見てると、廊下を走り回ったり、友達とサッカーをしたり色んな思い出が浮かんできて、この上靴もこんなにボロボロだけど自分と一緒に色んな思い出を作ってくれたんだなあと思ったので写してみましたと発表した。

 

全員拍手!パチパチパチ♪

 

校舎の前の一本の道を写して、遅刻しそうになって慌てて走ったり、辛かったマラソン大会を思い出したり、この道が僕の三年間の全てですと話す生徒さんがいたり・・・

 

普段から人前で話す事が苦手な子もみんなの前で堂々と発表し、皆から拍手を貰うとちょっぴり照れながら嬉しそうな顔をしていたり・・・ 

 

みんなの顔が最初の表情とは違って其々に輝いて見えた。

 

1+1=2 と 誰もが同じ答えを出す事もあるけど、想像の世界には答えはありません。

同じテーマで物事に取り組んでも其々が出す答えは10人10色で良いんです。

そしてそれらをまずは受け入れて認め合う心の余裕も必要なのではないでしょうか・・・

今の暗記教育の中で、想像や発想の世界に触れる事が少なくなってきています。

答えを丸暗記するだけで育った子供達がいつか社会に出た時に、途方に暮れてしまうという事。

それが今の雇用問題にも関係しているということ。

この国は解っているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

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