2013/07/16
羊皮紙作り本番
講師の八木さんは日本で唯一の羊皮紙職人。
と言っても本職は数ヶ国語を操る翻訳家だそうです。
そもそも羊皮紙は、はるか昔、紙のできる前の時代に、羊やヤギ、鹿などの皮を紙のように薄く削ぎ、重要書類や経典などを記録するために使われていましたが、今になって世界中から再注目されています。
事前のお話の中で実際に700年前に書かれた書物や羊皮紙で作られたブックカバー等色々見せて頂きました。
文字もハッキリ残っているし、金箔で装飾されている部分等もそのまま綺麗に残っている状態で、
よく目にする遺跡で発掘されているような物とは違い、全く古さを感じさせない物でした。
いよいよ作業開始。
よくある透明な衣装ケースのようなボックスから羊の皮が取り出された。
ウッ!
異臭が部屋中に・・・
これはかなり強烈だ。
事前の説明にも、匂いがきついので我慢できなくなったら外の空気を吸いに行って構わないと言っていたけど、今回の羊の皮は屠殺して剥いでから三日程石灰水に浸けてあったものだから臭は当然だし、命が存在していた事の証なのだ。
我慢、我慢・・・・
最初に毛を剥ぐ作業。
大きなナイフでひたすら削る。
次は裏側に残っている肉や脂等を削ぐ作業。
これもひたすら削るだけ。
半日ひたすら削る作業のみ。
しかしこの作業が羊皮紙の出来を左右するのだ。
交代で作業しながらひたすら削りまくる。
ようやっと削り終え、次は木枠を使って縮まない様に皮を張る作業。
そこから更に削り、仕上げにヤスリで磨きを掛ける
あとは数日干して完成。
小学生でも出来る作業だけど、全ては根気。
ひたすら削る作業。
講習が終わって直会の席でもスタッフの皆さんも羊皮紙の可能性を実感したようで様々なアイディアが飛び出しました。
講師の八木さんの話しでは、ハリーポッター好きな人達の間では羊皮紙に願い事を書くと願いが叶うという噂も・・・
よし!魔法のペンと羊皮紙のセット販売だな 笑
ついでに羊と雲の丘に鳥居でも作って羊皮紙絵馬や短冊の販売だな 笑
羊皮紙は光を透過するのでランプ何かにも使えそうだ。
アイディア次第では無限の可能性を秘めている。
講習後どうしても直ぐに欲しくて、販売先を聞いてみると、八木さん本人が販売しているとの事、
考えてみりゃそりゃそうだ 笑
一頭から六切サイズ(18×24cm程度)で5枚から6枚程度しか取れない。
作業中に穴が空いたりする事もあるので、そうなると更に使える部分は少なくなってしまう。
一頭分で1万8千円。
羊ではなくヤギだと9千円だそうだ。
一瞬ヤギにしようかと考えたが、周りからも士別なんだからやっぱり羊でしょ!との声。
果たしてプリントできるのかどうかの保証もないけど、やってみない事には何も始まらない。
その場で羊皮紙一頭分を購入させてもらった。
直会の時間までプリントしてみる事にした。
考える必要はない! ひたすら削ぐ作業中に色んなイメージを膨らませていたので後は実際にプリントするだけ。
羊皮紙には私が今までやってきたガラスの女シリーズがピッタリなはず。
私の作品の為に羊皮紙と出会ったと言っても過言ではない。
これをただ営業写真でプリントしたところで何の意味も成さない。
とりあえず羊皮紙の端の方を L判 程の大きさにカットしてテストプリント・・・・・
ガチャン! バキッ! ウィ~~ン! プリンターが悲鳴を上げた。
私も同時に悲鳴を上げた。
あちゃ~~~~~!
ヘッドが羊皮紙の硬いエッジの部分に引っ掛ったようだ。
直ぐにヘッドクリーニングをして、先ずは普通の紙でプリント。
最悪の事態は間逃れたようだ。
もったいないけど少し大きめのサイズにして、その中に小さめにトリミング。
再度プリント。
多少引っかかってインクが掠れたり飛び散ってしまったけど、これなら何とかいけそうだ。
後は手刺しでやればいけるはず。
インクの種類も考えていけば十分にプリント出来ると確信した。
そのうちカラーでもチャレンジしょうと思っている。
とりあえず直会に持って行って八木さんや関係者の方々にも見て頂くと、これは面白いと言って下さり、こんな風に直ぐに実践して取り組んで頂けるなんてと喜んでくれた。
写真の世界でも何でもそうだけど、講習やセミナーを受けて聞いて終わるだけなら参加することすら失礼な話だと思っている。
貴重な時間の中で自分が得てきた事を他人に伝える事の難しさを私も充分理解しているつもりだ。
そこに義を感じるから義を返す。
そこから人が繋がっていくのだと考える。
私はモノクロをやってきた端くれだけど、写真が上手いとか下手とかそんな事はどうでも良い。
モノマネが上手いと言われるけど、ただパクっているのではない。
そこに共感や感動、作家の思いを理解していく事、そして尊敬の念がある。
その中で作品が生まれていくのだと考えている。
温故知新とはそういうものではないだろうか。
今まで廃棄物として金を払って処分してきた羊の皮が夢を生んでくれます。
僕は写真を通じて羊皮紙の可能性にチャレンジしていきたいと思います。
講師の八木さんをはじめ、尾潟さん、高村さん、そして素敵な出会いを導いて下さったスタッフの皆さんに感謝感謝です。