2011/09/22
面接ラッシュ
開けたので昨日になるが、送別会で札幌に宿泊し、翌日はPCの部品探しの散歩をしてきた。
更に札幌から二人の面接希望者の資料が同時に届いていたので、急遽連絡を取ってみた。
今年に入り20人程の面接希望者がいたのだけど、今までの私の趣味の項目から面接という言葉は消えていた。
面接希望者にとっても、私にとっても時間の無駄でしかないので、そろそろ真面目にやろうと思い、先ずは電話口の応対や声の質で面接をしても良いかどうか判断する事にした。
電話口での応対の悪い者は接客業としては通用しない。
緊張もあるだろうが、その分を差し引いてもきちんとした日本語が使えないようなら尚更お話にならない。
お客様が電話で問い合わせをしてこられる時点で他のお店にも問い合わせをしていると考えれば、こちらの電話の対応次第でその殆どが決まってしまうものである。
現実今までどれだけの問い合わせの中で、御客様にその場でご予約を頂戴出来たことか・・・・
そこまで行き着くには修業時代に非常に辛い思をした事があるからなのだ。
師匠である清水さんに、お前は電話に出るな!と言われた事がある。
かなり前のブログにも書いたが、専属ホテルの写真室に弁当を届けるだけでも表玄関からは入れてもらえなかった事がある。
自分の身なりや口調に至るまで、とても御客様の前に出られるものではなかったのだ。
それに気付き、自分が聞いていても心地が良い対応をしている先輩達の口調を必至に真似た記憶がある。
トイレや風呂の中でも一人でシュミレーションをしていたのが今となっては懐かしい。
人前で話をする能力を高める事は必要不可欠であり、写真という表現の世界でも大きな関わりがあると考えている。
どこまで演じる事が出来るかなのだ。
数年後、清水さんとの会話の中で笑い話としてからかわれた事もあるのだけど、その時に先生が電話に出ているのを聞いた事がないと言ったら、これから結婚しようとする若い層の御客様にワシみたいな年寄り爺さんが出たらどう思う?夢も希望も無いだろガハハハ! 写真がいくら良くても商売は別だ!と笑いながら話していた事を覚えている。
そういう些細な会話でも今になって本当にその通りだと実感している。
これから自分の人生を賭けて挑もうとする場面で、受け答えの中で ハアとかウンなんて言葉を使う時点でアウトだ。
悪気は無くとも癖というものは気付かないうちに出てしまうものだし、本人がよっぽど意識しなければ直るものでもない。
更に声フェチの私にとって声質というのも非常に大切なものだと考えている。
現実に先日面接で稚内の店舗で採用を決めたスタッフは電話の対応と声質で決めたといっても大袈裟ではないのだ。
もちろん面接時での対応や表情、仕草等もクリアしている。
今年は殆どが電話口でお断りをしている中で、私が面接をしても良いと思った人はほんの数人しか居ない。
電話での対応を聞きながら、可能性があれば面接させて頂いている。
今私が必要とするスタッフは明確なものがあるので、そこがクリア出来なければ採用はしないと決めている。
うちの面接は実際に撮影の現場で行っている。
実際の動きの中で、その人がどういう姿勢で見学しているのかをさり気なくチェックさせてもらっている。
小さなお子様の撮影の時などは、接する目元を見ていると非常に解りやすい。
お陰様で面接まで辿り着いた子達は今までとは違って良い意味で私を悩ませてくれる。
まあそれであっても厳しい世界だから生き残れるのかは本人次第でしかないのだけれど・・・・
それと共に、今居るスタッフ達にも良い刺激になると考えている。
務めている年月は今の私にとっても会社にとっても殆ど関係が無い。
教えは平等だが、怠けているものは必ず差が出る仕組みを作ろうと思っている。
一生懸命やっている人間が報われなければ何がこの世の中で平等なのかも解らなくなってしまう。
今回の二人には予め志望動機を詳しく書いて送るように言ってあったのだけど、その文面の構成が二人ともなかなか良く出来ていた。
次は電話の対応だ。
突然電話をしてみてどんな対応をするのか楽しみだった。
一人は直ぐに連絡が付き、一人は連絡が付かなかったので留守電に用件を入れておいた。
連絡が付いた子の方から先に会うことにしたのだけど、待ち合わせ場所を決めたのだけど、その場所は良く知っている場所だったのだけど、試しに私が居る現在地からどのように行けばいいのかを尋ねてみた。
以前に講師で来られたある先生から、電話口で上手にお店までの道順を説明できない子は採用しないという話を聞いた事がある。
電話口の向こう側で家族の方が本人を助けるような声が聞こえてきた。
緊張の様子も伝わってくる。
悪い意味ではなく微笑ましくてついつい噴出しそうになってしまった。
無事に合流。
近くの喫茶店に入って色々と話をさせてもらった。
なかなか熱意のある子で自分が撮影をした写真も数枚見せてくれた。
今までの私なら即採用していたかもしれない。
まだ他にも希望者が居るので良く協議して後日連絡をするという事でその場を後にした。
面接中に電話が鳴っていたのを思い出し、確認するともう一人の子から留守電が入っていた。
非常に丁寧で自然な言葉遣いだったので、普段からきちんとした言葉遣いをされているのだろうと感じた。
今度は違うパターンで話してみた。
高田純次並みに適当な人間であるという事を軽いノリで演じてみた。
騙されろ!w
なかなか騙されなかった。
楽しくなってきた。 騙してやろう。 ウッシッシw
待ち合わせ場所も本人に決めてもらい、先程と同じ様に道順を尋ねた。
そこからだときっとそこが一番解りやすいかと思いますので、私の方からお伺いしますので大変申し訳ありませんが、多少お持ち頂いても宜しいでしょうか?
うちのスタッフには無い爽やかさ・・・・
一体何物なんだ?
いやいや私が騙されてはいけない、これが普通なのだ。
ついつい逆に騙されるところだったwww
どこか話が出来るところは無いかと尋ねたが、高田純次が囁きだした。
挨拶を交わした後の第一声が・・・・
「腹減ったなあ、飯食ったかい?」
さすがにビックリした様子だったwww
意気投合・・・・ もしていないのに一緒に食事をする事にした。
「昨日送別会があったんだけどね、二次会がピアノの弾き語りのある洒落たカクテルバーだったんだよ。 でもさあ主役の好みは全く考慮されていないんだよなあ、焼酎か日本酒、演歌かカラオケっていうのがパターンなんだけど、若い人達が設定してくれたのはありがたいんだけど、主賓の好みをちゃんとリサーチしてなかったんだよなあ・・・」
「それって大切ですよね、僕も先輩達からそういう事は凄く大切な事だと教わっています。
すみません、ちゃんと何時でも食事が出来る場所くらい勉強しておくべきでした」
この一言は大きい。
でもまだ騙されないぞ~!
「たまに稚内に顔出すんだけど、士別に居るとやっぱり海の物が食べたくなるじゃん?おまけにたまに顔を出すんだから静かな個室かなんかでスタッフ達と話もしたいと思うわけよ。
でもそこの大切さが解ってもらえないから毎度試してみるんだけど、リサーチなんかされている形跡も全く無いのよ。
俺が古臭いのかねえ、ギャップを感じてしまうよ」
「そんな事無いです、僕も稚内なら海の幸が食べたいなあって思いますよ。
でも若いと良いお店ってなかなか行けないから僕なんか回転寿司くらいが精一杯です。
でもリサーチは必要ですよね。 ちゃんと心得ておきます。」
ついつい寿司が食べたくなってしまった。
しまった!
私の方が騙されているではないかw
結局寿司屋に入る事にした。
「恥ずかしい話ですが、こういうちゃんとした御寿司屋さんは初めてです」
「そうか、でも俺も初めてだよw 普段は回転寿司が精一杯だものw」
寿司を摘みながら色々と話をしているとある事に気付いた。
私と同じものを同じ順番で食べているのだ。
色々と写真の話をしながら、その中でものまねが大切だと言う話をした。
私が一つだけ寿司を残しておくと、同じに残している。
話の最後に 「君は私と同じタイミングで同じネタを食べていたのだけど、意識していたんだろ?」
「え?・・・・ バレてました? それが一番間違いが無いかと思いまして・・・」
そんなところまで見られているのかというようなちょっとビックリした顔をしていた。
自分が清水さんに連れられて初めて寿司屋のカウンターに座った時の事を思い出した。
板さんが、通ですねと言った言葉にどうして通なのかが解らず、とにかく清水さんを真似れば大丈夫だろうと思っていた20代前半の自分がいたのだ。
それから数年後にやっと通と言われた意味を聞く事ができた。
脂の少ない白身から食べていくとムラサキが脂で汚れないとか、寿司は壽を司るという意味で縁起が良いからお祝い事に多く食べられるというような話を聞かされた。
その時に、ところでムラサキって何??って聞いたら清水さんが思わず喉を詰まらせてゲホゲホと咽ながらバシッと後頭部を叩かれた記憶がある。
その後も色々と話をしたが、騙したのか騙されたのか解らないまま、寿司を摘みながらという今までに無いとんでもない面接となってしまったが充分に楽しませてもらった夜でした。