奥山陽一のコラム

2011/05/25

がんばっぺ!ふくしま 撮影の旅5

 

誰だ?朝っぱらから人の上に乗って揺れているのは??

オネエチャンを部屋に招いた記憶など何処にも無いぞ・・・・

 

ビックリして飛び起きた。

 

地震だ。

 

寝たら多少の事では起きる事の無い私が目を覚ます程の揺れだった。



 

 

テレビを点けてみると、丁度地震速報が流れていた。

 

福島県浜通り地方震度5

 

浜通り? ん??

 

私が宿泊している此処ではないか。

 

その割にはたいした揺れではなかったように感じた。

 

後から気付けば、私が目を覚ました時には既に揺れがおさまる頃だったようだ。

 

それからもう一度寝ようとするが目が覚めてしまい、隣のコンビニに飲み物と軽い朝食を買いに出た。

 

後から先生に言われて気付いたのだけど、何のことは無い朝食はホテルで無料サービスで食べる事ができたのだ。

 

待ち合わせの時間が来たのでカメラを持って部屋を出た。

 

エレベーターの手前でチェックアウトをしなければいけない事に気付き、慌てて部屋に戻り荷造りをした。

 

すっかり早朝の地震のせいでボケまくっている。

 

直ぐに出発。

 

今日は初日の久ノ浜で入れなかった場所が気にっていたので裏側から周り込む事にした。

 

途中初日に撮影したホームセンターの向かい側の住宅街に入ってみた。

その場所もこれまでと同じ様な悲惨な光景だった。

少し撮影していると、子猫が現れた。

 

警戒している様子だったけど、しばらくジッとしゃがみ込んで見ていると弱々しい鳴き声でゆっくりと近寄ってくる。

 

手を差し出すと、今度は逆に離れようとしない。

 

何処に行ってもミャーミャーと鳴きながら着いてくる。

 

可愛そうに、ろくに食べていないのだろう、痩せ細った身体が痛々しい。

 

別れを告げ、更に奥を目指した。

 

 

此処は戦後の日本か?

 

空襲を受けた跡なのか??

 

 

此処は津波と火災により、街の一角そのものが壊滅状態となっている。

 

ため息しか出てこない。

言葉も出てこない。

 

被災地ではなく戦場と言った方が表現にピッタリかもしれない。

 

先生も唖然としていた。

 

車は勿論入れないので許可を得て車を停めて歩いた。

 

一体何処まで続いているのだろう?

 

警備の人の話だと、手が付けられない状態で、道を開けるのが精一杯で殆ど震災直後のままの状態だそうだ。

ご遺体もどれだけ眠っているか解らないとの事だった。

 

 

 

 

 

1.JPG 

周りを見渡すと家が流された跡の基礎部分の床下の隙間に、津波で流されてきたのだろうと思われる色んな物が挟まっている。

 

きっとこの中にご遺体も眠っているのだろうと感じる場所が何箇所もあった。

 

これはその現場に立った者にしか感じる事ができない事だと思う。

 

今回目にしてきた被災地の光景はテレビで見るものとは全く違う。

とても口では伝える事も表現する事も難しい。

現実を突きつけられ、後退りも出来ないほどの凄まじさを身を持って体感した。

 

 

2.jpg 

久ノ浜の幼稚園を撮影しながら凄く気になっていたのは決して勘だけではなくその現場で感じる全ての五感と集中力からなるシックスセンス、第六感が働いたものかもしれない。

 

それほど凄まじい光景なのだ。

 

 

3.jpg 

火事で焼け落ちた建物等もそう感じさせる理由の一つかもしれない。

 

無言のままシャッターを切り続けた。

 

集中していたせいか正直疲れた。

 

先生が私の飛行機の時間を気にしてくれているが、時間ギリギリまで写していたかった。

 

昼過ぎまで撮影を続けた。

 

絵のなるとかならないとか、上手いとか下手とかそんなものはどうでも良かった。

 

初日から感じていたのは、撮っているのではなく、撮らされているのだ。

 

先生もやはり同じ様に撮らされているのだと感じていたようだった。

 

よくモデルが良すぎると撮らされてしまうと言われるが、まさしくその通り。

 

完全に撮らされている。

 

それを感じるからこそ、この野郎!という気持になって、負けたくはないとシャッターを切り続けてしまう。

 

完全に私の負けかもしれない。

 

だからもう一度この地を訪れたいという気持にさせられるのかもしれない。

 

 

帰り道、ドラッグストアーに立ち寄り、ペットフードを購入した。

さっきの猫が気になった。

本当はやっちゃいけない事かもしれない。

それは解っているがどうしても放ってはおけなかった。

 

先程の場所に戻り、猫を探したが既に居なかった。

 

猫がいた近くの町内の家を一軒づつ周りながら一掴みづつ軒先等に餌を置いて歩いた。

きっとそのうち夕方にでも出てくるかもしれない。

少しでも腹の足しになれば良い、何とか生延びて欲しいと願った。

 

 

 

ここ福島の復興を遅らせる理由の中には原発の問題も抱えている。

 

テレビでくだらない討論を繰り返す政府の連中の姿に普段の何倍もの怒りを感じる。

 

お前達は今すぐに此処に来てこの場所に立ち、しっかりと現実を見ろ!それでもまだくだらない時間を費やすのであれば本当の意味での人災でしかなくなるのだ。

 

くだらない委員会を作るよりも、この現場で現実を受け止め、この現場で各党首が腹を割って話し合えば良い。

 

放射能にまみれた子供達の未来を考えているのだろうか?

 

20年後30年後にもし責任を問われる事態に陥ったとしても、今の政治家の殆どは引退しているかこの世には存在していないだろう。

 

その時に誰がその責任を追う事になるのだろうか。

 

更に文部科学省大臣の高木義明の無責任な対応にはビックリするどころか、目の前にいたら間違いなく胸ぐらを掴んでぶん殴っている。

 

子供達が将来癌や白血病を患ったりしたらどうするのかと言う質問に対して、そんな証拠があるなら診断書でも何でも出しなさいよと発言。

 

更には放射能の数値に対する安全と安心とでは解釈が違う、誰も安全だ何て言っていないと無責任な発言を堂々としている。

 

 

ワイドショーでもマスコミでも何でも良い、何故こういう発言に対してもっと突っ込みをいれないのだ?

 

 

何処そこの誰がくっ付いたとか離れたとか、ふてくされたクソ女を女王様扱いして機嫌を取りまくったり、どうでも良い事にはしつこいくらい追い回せるのに、何故この高木のような発言をもっと取り上げて追求しないのだろうか?・・・・

 

最後にもう一度言っておきたい。

 

私達が住むこの北海道は多くの東北の方々の汗と血と尊い命によって今があるのだ。

そして今日今現在被災地で必死に生きている人達が大勢いらっしゃるのだ。

 

 

皆さんも一度でいい、この地を訪れ、しっかりと自分の足で立ってみてもらいたい。

人其々に違うだろうけど必ず感じるものがあるはずです。

 

被災地の皆様が一日も早く安心して暮らせる日が来ますように・・・・・

 

 

 

 

 

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