2011/05/24
がんばっぺ!ふくしま 撮影の旅4
先生と合流。
数年ぶりの再会に笑顔で握手を交わし、さっそく車に乗り込み出発。
先生とは北海道の大会で講師として来られた時から目を付けられ (笑)
度々メールのやり取りをさせて頂いている。
政治のあり方に対して自論をお持ちで、写真の話より政治のあり方についてのやり取りの方が多いかもしれない。
再び小名浜に到着。
先程の港の様子を見て頂いた。
今日までのやり取りの中では、先生は撮影する覚悟が出来ていないと言っていた。
ボランティアに参加したり、反原発運動に参加したいとの事、色々な情報を知りたいとの事で私も色々と調べながら情報を提供していたのだが・・・・・
いざ現場に入ると・・・・
シャッターを切り続けている。
やはり写真家の血だ。
私より入り込んで撮影されているように感じた。
その様子をジッと見ているだけで勉強になった。
場所を移動し、先程のおばあちゃんと出会った豊間に入った。
おばあちゃんに教えてもらった方向に車を進めると、目に飛び込んできた光景に言葉を失った。
海岸線の一本奥の道路に掛かる橋が崩れ落ちている。
昨日の久ノ浜もそうだったけど、何処も復興などとは程遠い様子で、実際には手が付けられない状態なのかもしれない。
重機が入っているのは、持ち主が撤去処分の承諾をした張り紙を貼っている家の解体作業をしているに過ぎないのだ。
橋の直ぐそばまで近寄り、シャッターを切った。
橋の横の建物が今にも倒れそうに斜めに傾いている。
先生も唖然としながらため息をついていた。
撮影に夢中になっていると先生が消えていた。
ふと周りを見渡すと、反対側に渡って撮影をしていた。
過去に亡き師匠から、一つの物に対してあらゆる角度から写せと教わった言葉が先生の姿から蘇る。
私も負けじと角度を変えながらシャッターを切った。
言葉など必要としない写真教室そのものだと思った。
そこから更に移動していくと更に崩壊した街並みが視界に飛び込んでくる。
お互い思い思いに撮影をする。
何か有った時の連絡は携帯にする事にし、暫し自由行動。
どの家の中からも津波が押し寄せる瞬間まで普通に生活していただろうと思われるそのままの姿が残っている。
特に子供の玩具等が残っている姿を見る度に胸が締め付けられ、どうか無事であって欲しいと願わずにはいられない。
しばらくすると先生と合流した。
やはり同じ事を感じていたようだ。
その後も撮影を続けたが、先生がどうしても気になる場所が有ると言うので再び小名浜の港に戻る事にした。
実は先生が来る前に、以前にブログで紹介した古殿の吉田写真館の吉田さんに連絡を入れ、一緒に食事をする約束をしていたのだ。
先生にもその事を告げていたのだけど、すっかり撮影に夢中になり、待ち合わせの時間が迫っている事を忘れている様子だった。
何が気になっていたのだろう?
カメラを向けた先には午前中に私が撮影していたボートの山の横に、何故こんな所にと思わせる物が有ったのだけど、やはり先生もそれが気になっていたらしく、もう一度夕日の中の逆光で撮ってみたかったようだ。
それは何かというと・・・・
何故子供の玩具がこんな所に?
それにしても凄い集中力だ。
学ぶものが多かった。
その後いわき駅まで車を飛ばした。
途中吉田さんと連絡を取り、ホテルのロビーで待ち合わせる事にした。
先生がチェックインをしていると吉田さんが現れた。
HPで見た画像そのままの姿だったので直ぐに解った。
吉田さんも解りやすいようにあえてその格好をしてきてくれたらしい。
ホテルの近くの居酒屋に入ったが座敷がいっぱいで、席が空くまでカウンター座った。
乾杯をし、色々と話をするが吉田さんも大御所を前に緊張している様子だった。
先生がせっかく私と会えたのだから色々と質問したら良いよと気を使ってくれていた。
その後席が空いたとの事、移動をする。
吉田さんが徐に自分の撮影した写真を見てアドバイスして欲しいと切り出してきた。
私も大御所の前だと流石に多少の緊張が有る。
先生に見てもらう様に言うと、先生は私に先に見るように勧めた。
光は綺麗だ。
でも若さが足りないというか、遠慮がちな写真に感じた。
しかし隅々まで良く見るとやはり若い。
それはポージングに現れていた。
もっと愛情なら愛情を、家族の絆なら絆をという様にテーマを徹底した表現をすると直ぐに良くなっていくと感じた。
後はキャリアと型物の持つ意味合いをしっかり理解すれば表現は自ずと着いてくるだろうというレベルだった。
写真の表面的な出来は良いのだからこれからいくらでも伸びていけるだろうし、北海道にもこういう熱心な若い人が居てくれたら面白いのにと思った。
次に先生が目を通す。
いきなり、褒められたい?それともズバリ言われた方が良い?と切り出した。
吉田さんはもちろんズバリお願いしますとの事だった。
婚礼の洋装の二人写しを手に取り、この写真で足りないものはどこか解るかと問いだす。
吉田さんが背景と言うと、まあそれもあるけどもっと違うところだと先生が詰めていく、色々と答えていくが、どれももっと違うところだと詰めていく。
降参のようだ。
先生はお嫁さんのブーケの持ち方が粗末だと指摘した。
私も型物に対するそこの心根の部分だと感じていた。
表情も大切だけど、お嫁さんは先ずドレスを選んだり、ブーケや身に着けるものをどんな気持で選ばれているのだろうかという事をカメラマンは想像しなければならない。
そこの気遣いがあれば自然とドレスの捌きや、ブーケの持たせ方にも気を使った撮影が出来ると思うのだけど、先生はその心根の大切な部分を伝えてくれた。
当たり前の一枚だけどその辺が難しくもあり、カメラマンの心根を問われる部分だと思う。
先生がそういう事を口に出すのは珍しく、逆に羨ましいと思った。
先生に私の時にはそこまで突っ込んだ話をしてくれないと言うと、笑いながら自分の物を持って表現しているのだからそれが何処まで突き進んでいくのか楽しみにしているから変に言わない方が良いと思っているとの事だった。
良くも悪くも反論出来ない自分が居た。
その後、先生が遠くから来てくれた吉田さんに気を使って、早めに切り上げるようにとの事で吉田さんを見送った。
先生も疲れた顔をしているので、私も早めに切り上げるようにした。
お会計をしようとしたら、既に終わっていますと言われた。
先生がトイレと言って席を立った時に済ませていたらしい。
私が先にやらなければならない事だったのにと部屋に戻ってから一人で反省・・・・・
今日も無事一日が終わった。
明日はいよいよラスト。
もっと時間が欲しいと思った。
同時にもう一度この地に来よう、いや、来なければならないと考えながら自分の写真のストーリーを想像しながら眠りに着いた。