奥山陽一のコラム

2009/07/17

人間は自然の中では無力なんです。

 

朝からニュースで報じられている、北海道での登山客の死亡事故。

テレビをつけた瞬間に、雪崩か何かに巻き込まれたのかと思えば、低体温症だというではないか・・・



仕事に出るのに途中までしかニュースを見ていないけど、この事故は完璧に人災だと思う。

たかだか旅行会社のツアーコンダクターが山の怖さなど解るわけもない。

完全に判断ミス、決断力に欠けていたとしか言いようがない。

 

ましてや本州から初めて北海道に来る人は北海道の自然の厳しさなんて知る由も無く、半分観光気分やハイキング気分だったのかもしれない。

頼れるのはツアーコンダクターやガイドさんだけ。

 

この時の気温は7度で、おまけに強い雨と風が吹いていたというではないか。

だとしたら体感温度はそれ以下だろうし、1℃違えばかなり違うはず。

きっと 「7月」 という暦の上のイメージだけで考えれば夏山登山のイメージしか想像できなかったのだろう。

 

日記にもあるが、先日知床を周った時も日中の気温が10度。

地元の私達でさえ堪える寒さだったけど、静岡のくそ暑い所からいきなり飛行機に乗ってきて外に出たら10度だなんて耐えられるもんじゃない。

人間の体だもん、そりゃあ徐々に慣れていけば体もちゃんと対応していくようになるけど、30度超えからいきなり扉を開けたら10度ならビックリどころではないだろう。

 

ウトロから羅臼に抜ける、知床峠の山頂で外に出てみたけど気温8度でも寒いのなんのって、おまけに風が強くて体感温度はそれどころではなかったし、士別のマイナス30℃を普通に経験している私でさえブルってそそくさと退散して車に飛び乗ったくらいだもの・・・・

 

旅行会社は、この企画に対して人の命を預かるっていうことの自覚があったのだろうか?

 

私でさえ今回旅行の案内をする時には暑い所から来るんだから天候の変化や予測には気を張っていた。

知床からの帰り道、大雪山を越えるんだから途中天気が良ければロープウェーに乗せてあげようという計画も練っていたけど、いくら今居る場所が晴れていようと、目線は次の方向の天候に行っていた。

楽しいだけではダメなのよ! 人を楽しませるのと自分が楽しのでは違うんだってば。

来る時の峠の気温と街中の温度差、通過時間、それと自然の中で幼い頃から過ごしてきた勘が、きっと行っても寒いだけで楽しい気分にはなれないよ~と教えてくれる。

だとすれば、無理をせずにのんびりと違う楽しい時間を考えれば良い。

 

えぇ~行きたかったなあと言われても、あの峠以上の寒さを味わうのか?って諭していると思う。

逆に次に来る楽しみが増えるかも知れないではないか・・・・

 

北海道の自然を観光資源にするのも良いだろう、でも自然相手に銭が先という人間の欲が今回の事故の引き金になってしまったのかもしれないと考えると、この事故は人間が引き起こした事故でしかないのだと思う。

今回のツアーには、確かに楽しい事だけを想像されて参加されたのだろうと思うし、旅行会社もまさかこんな悲惨な事故を起こすとは夢にも思っていなかっただろう。

でも、人間が宇宙に飛び立とうとも、どんなに素晴らしい発明をしようとも自然の前では無力なんです。

 

逆に自然の中に身をおいてうまく付き合っていければ、生きる事に対してとてつもなく大きな財産を与えてくれるのです。

100メートル四方の自然を大切に守れば、自然は人間一人を十分に生かしてくれるものなのです。

 

 

 

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