奥山陽一のコラム

2009/01/25

風の会 本番

 

F君からのモーニングコール。

普段朝食を摂らない私も、この日は風の会との勉強会という事で気合を入れるためにしっかりと頂きました。

 



DSCF5046-メール用3.jpg  10時の集合時間。

六本木ミッドタウンに着くと、入り口の前に怪しげな集団が・・・

業界雑誌で見た事のあるような無いような人達が一斉にこちらを見てニヤニヤしている。

来たな北海道!そんな感じで出迎えてくれた。

 

会長とは一度面識があり、良いのか悪いのか随分と私の事は印象深く覚えていてくださっている。

早々握手を交わすとゾあちこちから名刺交換を求める手が伸びてくる。

こんなに一度に大勢の人と名刺交換するのは初めてでした。

 

会場に入り、風の会の皆さんが準備を進めていた。

北海道のメンバーは皆緊張の面持ちで、シーンと静まり返っている。

私だけは緊張感がなく、タバコが吸いたくて違う意味で手が震えてきそうだった 笑

 

「では皆さんの写真を提出してください」号令が掛かった。

 

今回の案内に作品と呼ばれる写真はご遠慮願い、純然たる営業写真だけをお持ち下さい。 

という私には理解の出来ない文面が回ってきたせいで、気持ちが半分冷めている。

私はこの勉強会を意識して撮影するような事もせず、普段撮影させていただいている御客様にお渡し

する写真を提出した。

作品とか営業写真とか訳隔てる必要がどこにあるのか?

一枚の写真表現はその作家の全てであり、制約が有るとすれば私達は人間を写す仕事に携わっている事だけで、御客様の中には私のところのようにヌードを希望される方だっているのに、ヌードは作品であり営業写真では無い!だなんて言い張る低次元な考えの人間も私の周りにも大勢いるというのが現実だ。

いやいや低次元だ何て言うとなんだな・・・・理解されていない人というのが正しいのかな?

私のような写真を見ると理解に苦しむというが、私から見ればそういう人達の方が理解に苦しむ。

 

まあとりあえず組織で動くのだし、それなりに全国的に有名な風なのだから今回はおとなしくしておこうと、とりあえず新しいスタジオのセットで自然光の中で写した赤ちゃんの写真と成人式に来られた双子の姉妹の写真を提出した。

「それでは各々に提出された皆さんの写真に目を通してください。しっかり見ていただいてから始めます」

 

ずらりと並んだ70枚近くの写真をグルッと見て回った。

綺麗な写真ばかりでその完成度は相当高いものばかり・・・でも内容がどうかと言われると、どうなのだろうか・・・普通の写真館で撮影している内容となんら変わりは無い感じだ。             ただフィルムなどの元の素材の特性を限界ギリギリまで引き出しているし、発色感なんかも凄く綺麗で、私には真似が出来ないくらいのレベルの高さだ。

 

さていよいよ勉強会のはじまりだ。

私は遠慮して端の方の席に座った。

風の会長さんが、おいお前は一番前だ!と私を会長の目の前に座らせた。

一同爆笑。

いよいよ一枚目、「この写真について何かご意見のある方」 

「おいおい!何の為にさっき時間をとって一枚一枚見たんだ?ポンポン意見が出てこないってのが

一番駄目なとこなんだよ!!思った事ドンドン言葉に出してこいよ!」

いきなり会長の罵声が飛んできた。

へえ~~面白いじゃん!そうでなきゃ!・・・なんて思っていると・・・

「ほら!ガンガン言え!お前は全部の写真に発言しろ!」

ちょっと楽しくなってきた。

今日はおとなしく貝になっておこうと思っていたから、ワクワクしてきた。

何故かといえば、北海道の会長はずるくおとなしい男で、今回も私に根回しのようにおとなしくしている様にと事前に電話までよこしてきた。

いつもこの人とはぶつかる。 なにせずるい人だ。おりこうさん主義。

風の会長が言ってくれるんだもん、暴れても良いよな・・・北海道から一緒に行ってる若手メンバーは

下を向いて俯いているだけだし・・・

 

それでも最初なのでやんわりと控えめにぐさりと意見を言ってみた。

まだまだ本質を突いても大丈夫そうな感じだ。

次から次へと意見が飛び交うようにもなってきた。

そしていよいよ私の写真の番がやってきた。

なぜか褒められるばかり・・・あれ?皆さん遠慮してるのかな?

会長もこれは良いと褒めだした。

おいおい!確かに周りと路線はちょっと違うけどガツンと言ってくれなきゃ東京まで来た意味が無いだろう・・・・

何事も無く私の順番が終わってしまった・・・もう少し議論してくれても良かったのに。

 

昼を挟んで、再開。

 

二枚目の私の写真が出た。 成人の双子の写真だ。

後の方からやっと意見が聞こえてきた。

セミナーなんかでよく雑誌に出ている人だ・・・・やったあ!色々言ってくれると嬉しいなあ・・・

あれ?何言ってるの?

「成人のお客様を写しているのに何故ニッコリ微笑ませて写さなかったんですか?」

え??マジに?? 人違い?勘違い?

「私は写真館のお客様だからといってどのお客様もニコニコ笑わせて撮る必要は無いと考えております。お客様との打ち合わせの中で、成人の年頃の微妙な心の中を察したり、ご要望をお聞きして表現していくのもプロの仕事だと思います。100人写して100人が同じ写真なんて有り得ないし、そんな写真をお客様に提供したくはありません!」

そいうと、会長がニヤニヤしていた。

こうなりゃ私も引く訳にはいかない・・・

会長が・・・「お前こんなもんじゃないだろう!どうしてこんなおとなしい写真ばかり出してきたんだ?」と噛み付いてきた。

私は・・・「作品はご遠慮下さい、純然たる営業写真をお持ちくださいと書いてあったからその指示に       従っただけです。私の中には作品だ営業写真だなんて訳隔てる考えはありませんが、組織で行動しているので従っているだけです」

 

「うるさいよ!お前はヌードだって御客様の要望で撮影すれば立派な営業写真だ!って噛み付いてこれる男だろ!? 何をおとなしくなってるんだ! そういうお前を期待して待ってたんだぞ!」

正直嬉しかった。

たった一度くらい北海道に講師で来られた時に会っただけの会長がしっかりと覚えてくれていた。

そして私の気持ちを汲むように、もっと噛み付け!おとなしくなるにはまだまだ早い!といってくれているようだった。

 

「私は組織に牙を抜かれてしまいました 笑」

 

夕方勉強会が終了し、二次会に流れた。

色んな人が話しかけてくれる。

隣に座った人がニヤニヤしながら料理に着いてきたナイフを持って、このナイフは奥山を刺す為のものだと言うと周りの皆さん大爆笑! こいつは殺しても死なないタイプだわなんて言われる始末。

でもこういう方が私にはピッタリだ。

その分私も話しかけてくれる人に頭を下げて歩いた。 

「生意気な事ばかり言ってすみません、普段はシャイでクールでナイーブで思った事の半分も言えない男なんですが勉強会は別物なので・・・」

でも写真をやるもの同士、この辺はしこりがないのが良いところだ。

〆の挨拶で風の副会長さんが、北海道の奥山のツッパリは非常に印象深かったですと言ってくれ、

ちょっと照れくさかったけど、十分に北海道の存在をアピール出来たと思う反面、これまで以上に写真に立ち向かわなければならないと感じた一日でした。

 

 

 

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