義理がたい奴
玄関先でどこかで見たような車が通り過ぎて行った。
しばらくしてすっかり忘れた頃、息を切らした0君が入ってきた。
やっぱりそうか・・・
「どうした?生きてたのかw 何をそんなに慌ててるんだい?」
「いやあビックリしました。HPの日記を見て、改装しているのを知ったんですが、そろそろかなと思って見学に来たんですがあまりにも変わってしまっていたので通り過ぎて、気付いたら士別の出口でした」
「ハハハ、まあ自分でもビックリするくらいイメージ通りに仕上がってくれてホッとしているところだよ」
「内装もメッチャ綺麗じゃないですか・・・突然どうしたんですか?前のスタジオだって綺麗だったじゃないですか」
「どうしちゃったんだろうね?まあ意地と言うか何と言うか・・・
3年後、5年後、10年後の自分や街の情勢や色んな事を考えているとここに行き着いたって感じかなw」
「デザイナー入れたんですか?」
「いやいや士別にデザイナーなんていないし、これくらいは自分でやれるだろうよ」
「ひょえ~!自分には思いつきもしませんよ」
「まあそりゃ俺みたいな天才はそうそう居るもんでもないけどさwww、これくらいではまだまだ!新築で建てるならもっと面白いアイディアを沢山持ってるよ。銭がさあ・・・銭が!
銭が無いから金を掛けずに化けさせるのは大変なわけよ!www
で?どうしたの?」
「どうしたのって、お祝い届けに来たんですよ。
それに先生が新しいお店を手掛けているんですもん完成が楽しみで
しょうがなかったし、絶対に見るだけでも勉強になると思って走ってきました」
「馬鹿だなあ・・・こんな御時世だから迷惑掛けると思ってそんなに知らせてないんだぁ。 親兄弟にもたいして話もしてないんだよ」
「先生!何を弱気な事を!こんな時代だからこそ俺ら義理を無くしたら何にも無いクズになっちまいます。
しょうもない自分に声を掛けてくれたから今の自分があるんです!
どんな事があっても近くの情より遠くの義理と教えてくれたのは
あなたです!一つ頂いたら十返せ!この教えで自分もなんとか仕事させてもらってます。」
「まあそんな事もあったっけなw何年ぶりだっけ?」
「スタジオにはオープンの時以来ですから13年ぶりかと」
「俺の個展の時にも来てくれたじゃん。あの時はありがたかったよ
ありがとね」
・・・・こんな会話から始まり久々にO君との再会に盛り上がった。 彼は写真関係でも何でもなく全く畑違いの仕事をしているけど、20年位の昔、仕事の事や人付き合いの事などで一度相談にのっただけの間柄。
普段は会う事も無ければ殆ど連絡など取った事も無い。
でも私に何かあると必ず顔を出してくれる。
ヤンチャだった彼も今では会社の経営者・・・
肩で風を切って歩いていた男が今では誰よりも腰の低い男に変わっている。
人は必ず変われる! 彼を見ているとそんな言葉が浮かびます。
こんな時代だからこそ・・・・義理人情 そんな言葉も忘れ去られ、不義理な人間が多い中 久々に心に響きました。
忘れていた何かを思い出させてくれたO君に感謝です。
久し振りに日本酒持って師匠の墓参りにでも行ってみようかな・・・