奥山陽一のコラム

2008/10/23

稚内から・・・

 
先日メーカーを通して写真を勉強したいと言う女の子、子?ん?
女性? 31歳はやはり子なのか?・・・まあそれはおいといて、稚内からスタジオ見学を兼ねて写真館の跡継ぎ娘さんがやってきた。

今まで過去にそのメーカーから紹介で来る人間は写真というものを舐めている人間ばかりで、人間的魅力も義理もくそもあったもんじゃない。

色々考える事もあり、今回ははっきりと、俺が10年も20年も掛けて得たものや人の何倍も苦労して得たものを簡単に教えてもらえる、簡単に得れると思われたくもないし、礼儀の無い人間ばかりじゃお話にならないと伝えた。

見学に来るのは良いが、後は本人次第。


だいたい写真も知らないようなメーカーの人間が知ったかぶりをして簡単に語るな!とついつい荒くなってしまう。

デジタルの時代になろうが何だろうが、写真をやる人間の心根を崩してはいけないとこの頃つくづく感じてしまう。
光を作るのも、シャッターを切るのもカメラマンという一人の人間の感性には変わりは無いのだから・・・・写して写っただけの偶然性の中でたまたま良い写真が写ってしまっただけで勘違いして天狗になってしまうこの業界の若い奴らに呆れている。

こちとら毎日光とにらめっこしながら一枚の絵を考えて考えて苦しみながらやっとの思いで作り上げているのだ。

まあそんな気持ちもあって、とりあえずは見学はOKした。

それでも、性分なのか何なのか・・・・
色々話しているうちにライティングの講習会が始まってしまった。

彼女に自分で自分の店の設定と同じライティングをするように伝え、まずは一枚写してみた。
次に私がライティングして一枚。

テレビに映し出すと子供でも解かるくらいの違いがある。

彼女の目付きが変わった。

落胆の目ではなく、ギラギラしてきた。

試しに軽く光の置き方をアドバイスし、彼女のライティングの欠点を伝え、もう一度ライティングをしてみるように伝えた。

俺は疲れたから出来たら呼んでくれ。 あとは放置プレーだ。

ややしばらくして呼ばれたので、一枚写してみた。

まあ見事に変わった。

でもここまでは誰でもやれる世界。

あとは稚内に帰ってもう一度自分のスタジオの環境でやってみて、
写したものを持ってきて見せるように伝えた。

数日後彼女から連絡があり、うちの撮影のある時にお邪魔したいとの事・・・彼女がやってきた。

プリントを見せてもらってビックリ。

見違えるくらい良くなっている。
内容は無いようってな感じの写真だけど、光の置き方が素直で、
うちに来た子達の中で一番早くスタートラインに立ったなという感じだ。

色にも気を使って、プリントも工場とだいぶやり取りしたらしいが、色の見方もセンスが良い。

きっと帰ってから相当スタジオでライティングを練習してきたのだろう。
それがきちんと写真から伝わってくる。
下手くそなんだけど、ちゃんと伝わってきた。

それであればこちらもきちんと応えなければならない。
成人さんの撮影が二軒入っていたので、それを見せながら夕方から
美容室の先生に頼まれた成人の見本撮りに入ることを許可した。

来ても何かが伝わってこなければ、成人のお客様の撮影を終えたら帰ってもらうつもりだった。

モデル撮影は私の持っている全ての光が飛び交う。
だからこそ普段は他人に見せる事は無いのだけど彼女の努力に
対して応えるために無言で見せた。

約二時間の撮影を終えるとスタジオから美容室の先生やスタッフさん達から歓声があがった。
拍手とお疲れさん!の一声で終了。

彼女の目がギラギラしているのが解かった。

その後食事をしながら、彼女のスタジオの話や今後の方向性や、色んな話をしたけど、ちゃんと向き合いながら食らい付いてくる。
私も写真の話になると朝までガンガン行く方だけど、彼女もそのタイプらしい。

結局朝5時過ぎまで話が止まることはなかった・・・・

翌日の朝スタジオに下りると、彼女がスタッフ達と話をしている。
聞くと、目を瞑るとストロボの光が浮かび上がってきて興奮して眠れなかったそうだ。

自分の昔を思い出してしまった。

負けないように頑張らなきゃ・・・
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